現在、学会からつけまつげやマスカラなどについて正式に安全規準(禁忌情報)を発信しているのは見当たりません。化粧品メーカに聞いたところ、問合せがあった場合には「つけまつげやマスカラなどの着色材料には一般的には酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などが含まれてるのでMR検査前に除去していただくようにアドバイスしている」との返答をいただきました。当方で、いろんなコスメティック製品の成分を調べてみると、ほとんどの製品に鉄製分が含まれています(中には記載のないものもあります)。
実際に、鉄成分が含まれていると称している製品をMR装置に近づけると吸引力は角度にして5度以内ですが、ゼロではありません。ただし、熱の発生については不明です。患者を検査する場合に成分を確認するとしても、患者自身が成分を知って使っているとは考えにくいですし、たとえ銘柄がわかったとしても、操作者が検査前にその製品に鉄製分が含まれているかどうかを調べることは困難だと考えます。したがって、患者さんの安全を確保するためには、目という人間にとって重要器官に近いことからも「検査前に除去した方がよい」という結論が導かれると考えます。
また、除去せずに検査を実施した場合、患者に損傷がなくても身体に付着した鉄成分がボアに付着すると、均一性の低下が起こり画像の劣化をきたすことが考えられます。これを解決するには、クエンチさせて清掃をしなければなりませんせんが、確実に回復するかの保証はありません。したがって、それらのリスク(他患者にも及ぼす画像診断の精度低下、病院への経費負担)を侵してまで除去せずに検査を実施する理由はないように考えます。