患者を要とした検査依頼医とMRI検査担当者との関係に視点が集中しがちですが、病院として安全に最善の医療をどのようにすれば患者に提供できるかを考えてみるのはいかがでしょうか。
確かに単純MRI検査そのものに同意書は必要ないかもしれません。しかし、いずれの主治医(依頼医)であってもMRI検査の必要性とリスクを患者に説明することは怠っていないと思います。ただ、当該患者がMRI検査に適応であるかの確認が抜ける場合があります。このような場合に、検査当日になって禁忌であることが判明するとトラブルになります。事故を未然に防いだという意味で良かったというべきですが、二度来院することになった患者への対応は病院として解決策を検討すべきと考えます。
MRI検査の安全確保の最後の砦は現場の技術者です。いずれにせよ体内金属や体外装着品の最終チェックは担当技術者が問診をすると思いますので、そのチェックシートの確認後に患者の署名ならびにチェック担当者のサインをするというシステムを構築するのはいかがでしょうか。それを同意書と同じような取扱いにすることも可能だと考えます。
次に、依頼医の言う承知のリスクとはどのようなものかを考えてみましょう。命に別状なければ、「火傷のリスクを冒してMRI検査をする」は体表に対してのみOKだと考えますが、「体内の医療デバイスが壊れたり移動して臓器を傷つけた場合に手術して再建する」というリスクまで依頼医は通常の場合にOKだとは考えていないでしょう。これまでたまたまスルーしていて事故が起こらなかったから大丈夫だというのは、腐りかけた吊り橋を渡るようなものです。ただ、MRI技術者も依頼医同様に医療者として患者に最善の情報を提供する使命を持っていますので、依頼医の要望にどのようにすれば応えられるかを考えるのも必要だと思います。
依頼から検査までの流れとして、「依頼医が患者に検査の必要性を説明する」→「依頼オーダを出す前に患者が禁忌でないかを確認する」→「患者は検査説明書とセルフチェックシートを持って帰る」→「患者はセルフチェックシートにチェックを済ませて検査日に来院する」→「放射線科受付やMRI受付で禁忌患者でないかをチェックし、MRI検査の注意事項を説明する」→「検査直前に体内・体外・装着品・装飾品などの最終チェックをする」というのが理想だと考えますが、施設環境によって最後の砦だけは崩さないように臨機応変に効率化(アレンジ)を進めていただければと思います。