静電気抑制効果のある衣服やマスクが、静電気に帯電しにくい素材(吸湿性の高い綿や絹,麻,羊毛などの天然繊維100%)で製造されている場合は、特に素材そのものに金属が使用されている訳ではありませんので脱衣する必要はありません。ただマスクの場合、鼻にかかる部分に金属が使用されている場合は熱が発生する可能性がありますので外していただく必要があります(金属部分をマスクから外せば、マスクを着用のままで検査可能)。
しかしながら現状では手に入りづらいとのことですが、静電気防止策として電気の流れやすい金属やカーボンなどの物質を混入した導電性繊維で製作された作業服があります。この服は金属のように電気を通しますので着用のままでのMRI検査は危険です。スカートやコート、ワンピースなどに縫いつければ静電気防止が可能となるようです(下右図)。
患者様が更衣などによって静電気に帯電されたまま装置やコイルに触れた瞬間に放電する可能性が考えられますが、ほとんどは更衣後に扉を開けたり地面に触れたり(スリッパで歩行)することで放電しているためMRI検査室内まで患者様が帯電していることはマレだと考えます。しかし、非導電性のゴム底の靴をはいていることの多いMRI操作者は発生した静電気がアースされることなく帯電したまま装置やコイルに触れてしまうと、放電しコイルやガントリの電気回路に障害(装置がハングアップし再起動する必要がある)が発生した例があるようです。現在では、それを防ぐために放電パットを貼付し、事前にタッチしてから装置に触れるようにしてもらっているようです。
最近になってこの現象が増加しているのは、これまで操作者が入室する際に扉などの金属に何らかの理由で触れて放電されていたのが、化粧壁紙などで覆われるようになって放電されにくくなっているのが原因だと推測されます。帯電しやすい体質になっている方も多いと聞きます。そのような方は、ガントリやコイルに触れる前に放電パットで十分に放電してから入室されるのが推奨されます。
ちなみに衣類の繊維には、プラスを帯びやすいものとマイナスを帯びやすいものがあります(下左表)。プラスに帯電しやすい素材とマイナスに帯電しやすい衣類を組み合わせると静電気が発生しやすくなります(表のプラスとマイナスが離れている組合せ)。例えば、ポリエステルのブラウスを着たときはナイロンのスカートよりも綿のスカートのほうが静電気は発生しにくくなりますので、重ね着をする時にはできるだけ同じもしくは近い素材の衣類を重ね着すると静電気が発生しにくくなります。