脳は 平熱の37℃前後で正常に働き、体温が1℃上昇すると多くの化学反応が約10%早く進み、42℃を超えると機能は衰え、45℃を超えると脳の神経細胞がダメージを受け重大な障害を残すと言われています。脳が耐えられる限界は42℃~43.5℃で60分、43℃で10~20分とされています。
安全基準では、MR装置のRF波による温度上昇の上限値として、体内深部温度上昇に関する上限値が通常操作モード:0.5℃、第一次水準管理操作モード:1℃に規定され、体内深部温度ならびに局所組織温度の上限は通常操作モード:39℃、第一次水準管理操作モード:40℃に規定されています。したがって40℃の高熱を発している被検者の場合は、規定の安全基準を超える可能性がありますので安易に検査を実施することはできません。
ASTMが規程する発熱試験用ファントムの体幹部を表示SAR:2.0w/kgで30分間RFパルスを照射したところ深部温度が1.3℃上昇したという実験結果があります。一般の被検者の場合、規制値内では放熱作用があるのでRF照射による体温上昇はほとんど問題になりませんが、40℃の高熱となると体温調節機能に異常をきたしている可能性もあります。このような理由から、40℃の発熱のある被検者に対してMRI検査を施行すると、脳の機能低下を呈する42℃に近づき熱中症と同様の症状を引き起こすことや、ひどい場合には脳への傷害も考慮する必要があり、非常にリスクが高くなることを認識しなければなりません。
39℃以下の発熱なら、低SARの撮像条件で必要最小限のプロトコルを短時間に検査を終了することでリスクを下げることは可能です。