磁場内で急激に頭を動かしたときに感じる「めまい」「ふらつき」「口内の金属味」「磁気閃光」などの生理学的影響が知られています。被検者には磁場内ではゆっくり動くように指示する必要がありますが、現象は一過性です。臨床で一般的に用いられている3T装置では、健康に対する悪影響は報告されていませんので、現在では静磁場強度の通常操作モードが3Tまでとなっています。
心臓ペースメーカなどへの静磁場による有害な影響は、一般的に0.5mT未満であれば問題のないことが知られていますので、漏洩磁場が0.5mT以上の区域を立入制限区域として管理することになっています。
静磁場中に置かれた鉄などの強磁性体には、吸引力と回転力が働きます。吸引力は、強磁性体が置かれた場所の磁場の強さと磁場の空間的な変化率の積に比例し、強磁性体は磁石の中心に向かって吸引されます。磁石の端部(開口部)付近で吸引力が最も強くなり、磁石の中心部では強い力は働きません。
回転力は、磁力線の方向に強磁性体の長軸が揃うように働く力で、その場所での磁場強度の2乗に比例します。この力は磁石の中心部でも強く作用します。
もし間違って体内に強磁性体の断片が存在する被検者をコイル内に入れ込んだ場合、中心部で吸引力は働きませんが、回転力は作用し続けています。被検者を磁場内で動かせると、さらに強い力が断片に作用しますので、注意深く極めてゆっくりテーブルを引き出してください。