今回の事例を禁忌とする判断基準はありません。40年前の整形外科のインプラントには、MRI検査に関する危険性表記もありません。1980年頃というのは、チタン合金やコバルト・クロム合金が出始めたころでステンレス製品も十分使われていた可能性があります。といってステンレス製品すべてが強磁性体だった訳ではありません。十分に股関節に固定されていれば、吸引力より固定保持力の方が勝ることも十分にあり得ます。ただし、発熱に関しては不明です。結論としては、十分に危険であるということになります。
まず、そこまでリスクを冒してまで検査をしなければならないのかを判断基準としてください。どうしてもMRI検査をしないと被検者の今後のQOLが低下すると判断をするのなら、主治医から危険性とどのような状況が起こり得るかを患者に説明していただき、患者から承諾を得てから主治医の責任の下で低磁場のMRI装置で実施することになります。
十二分にゆっくりガントリに近づき、患者が異変を訴えなければ撮像は可能だと考えますが、スカウト画像であるグラディエントエコー法で股関節部を撮像した時に、アーチファクトの出現の仕方で人工股関節に含まれる磁性体の量が推測できますので、その時にあまりにも大きなアーチファクトが出るようであれば、危険性が高いということでMRI検査を中止にした方がよいと考えます。
以上のような意見を書いていますが、第三者的には決して推奨できるものではないことをご承知おきください。